保障が同じなのに保険料が高くなる原因とは?
まず前提として保険料は予定死亡率及び予定発生率、予定利率、そして予定事業費率から計算することができます。
この中で本トピックに最も関係が深いのは予定事業費です。
予定事業費とは保険会社が運営していくうえで将来必要になると考えられる経費の金額です。保険会社は過去の実績や今後の事業計画などから、毎年どういった経費がいくらくらいかかるのかを見積もって保険料の計算に織り込みます。
よく巷で言われていることではありますが、保険会社にとって死亡率や入院、手術の発生率で保険料に大きく差をつけることは難しいです。
もしこの部分で差をつけようとすると、加入できる条件に差をつけることで一定程度可能だと考えられます。この加入できる条件のことを専門用語で引受基準と言います。
加入できる条件はそれぞれの保険会社で異なる部分はあります。同じ人でもある保険会社の商品には入れないけど、違う保険会社の同じような商品には入れたということはよく耳にします。
しかし、この加入できる条件で大きな差をつけることはかなり難しいです。ある会社だけ不健康な人の加入を認めてしまうと、結果としてその会社には他の保険会社には入れない不健康な人が集まってしまう可能性があります。これは非常に大きな問題があることがわかると思います。
ですので、保障内容が同じであれば、保険会社の間でそこまで加入できる条件は変わらないと考えられます。
つまり、死亡率や入院、手術などの発生率を保険会社側でコントロールすることには限界があるということです。
また予定利率についても同様です。保険会社によって資産運用の方針は異なるものの、同じ市場環境で運用をしていますので、この部分で大きく差をつけることはやはり難しいです。
このため、同じ保障内容でも保険料に差が出るということはこの予定事業費に差があるからであることがわかります。
死亡率や入院や手術の発生率、運用の状況などは保険会社の中で完結する話ではありませんので、コントロールするのはとても難しいです。しかし事業費は基本的には保険会社の中の話ですので、死亡率や利率よりはコントロールが効きそうです。
つまり予定事業費は企業努力で一定程度の差を出すことができる要素ということになります。
予定事業費が大きいのは悪か?
長年保険会社から給料を取っていた身としてややポジショントークになってしまうかもしれませんが、予定事業費が大きく、それによって保険料が高くなってしまっているのは悪いことなのか、ということについて考えてみたいと思います。
巷にあふれる節約系のインフルエンサーやYoutuberなどの著名人は、保障内容が同じであるにも関わらず保険料が高いのは、上記のことを理解したうえで企業努力が足りないからで、同じ保障なら安い保険に入る方が良いに決まっていると仰っています。
これについては一部は同意します。確かに都内の一等地に自社ビルを建て、人気の俳優や女優を起用して華やかなCMを作るお金は元は契約者の皆さんから払い込まれた保険料です。それが保険の加入者にとって何か便益があるのか、というのは尤もな疑問だと思います。
保険会社の言い分
しかし中立性を強調するために敢えて保険会社の理屈を並べると、都内の一等地に本社がある会社には優秀な人材が集まります。また、CMを打つことで新しい契約の獲得に繋がります。保険会社にいる人が優秀でなかったり、新契約が獲得できないと、今の契約者にとって何が困るのでしょうか?
契約者にとって最も困ること、そして保険会社にとってもあってはならないことは、保険金や給付金を契約通りにお支払いできないことです。極端な話では保険会社が潰れるということが誰にとっても一番困るわけです。
保険会社に勤めている人がバカばかりで商品も全然売れない、となると誰も得をしない結果になるわけです。もちろん保護機構などのセーフティネットやソルベンシー規制などの監督もありますが、基本的には保険会社はじぶんたちでどうにかしなくてはいけませんので、既存の契約者のための活動とも取れるわけです。
しかしこの視点は如何にも保険会社都合でなかなかメリットを実感しにくいところではあります。
保険を買う人が見るべきポイント
ではもう少しわかりやすいことを考えてみましょう。それは、アフターサービスの手厚さです。
アフターサービスは保険会社によって大きく異なります。保険契約に関する照会対応など最低限のサービスに留めている会社もありますが、お医者さんにいつでも健康相談ができたり、介護施設を紹介してくれたりなど保険商品にあったサービスを提供している会社もあります。
アフターサービスを提供するお金はもちろんタダではなく、予定事業費に含まれています。そのため保障が同じでもたくさんのアフターサービスが付いていれば保険料は高くなります。
そしてこの部分は大きな保険会社にとっては有利です。サービスの提供には必ず固定費があり、それをそのサービスを受けられる契約者全員に割り振られることになります。このため、契約者の多い保険会社ほど同じサービスを安く提供できるはずです。
それではもうひとつ別の視点で考えてみましょう。それは保険募集人の質です。
保険は普段保険に関係ない人からするとわかりにくいものだと思います。そのため、顧客の人生設計などをお伺いしながらニーズの喚起を行い、重要事項のご説明などを担当する保険募集人の役割は非常に重要です。
また、当局も顧客への信認義務については監督を強化しているところであり、保険募集人の果たす役割の重要性はますます高まっています。
そういった意味できちんと役割を果たしている募集人の方が、正当な対価を得るのは私は当然だと考えています。
私はこれまでの経験から多くの保険募集人の方を存じていますが、募集人の枠を超えて人間として素晴らしい方を何人も知っています。
本当に良い募集人の方に出会えて、しっかりじぶんの人生設計などを相談しやうえで、じぶんに本当に合っていると納得して保険に加入できるのであれば、それは万が一のときの保障と同じくらいの価値があるかもしれません。
また、優秀な募集人の方はアフターサービスも充実しており、契約後も保険に関係する相談やお金に関する心配事などの相談に乗ってくれる方もいらっしゃいます。
このようにこの募集人の方にだったらお金を払っても良いと納得できるのであれば、その判断に文句を言える人はいないでしょう。同じものでもメーカーが異なれば価格が異なるというのはよくある話で、それでも営業マンの人柄や会社のアフターサービスの差で高い商品が選ばれることがある、というのは保険に限らずどんな商品でもある話です。
つまりまとめると、予定事業費が大きいこと自体は単純に悪とは言い切れないということです。
結局何に気を付けないといけないの?
しかし一方で上記のような理由をまったく考えずに高い保険に加入してしまうのは問題です。何となく保険に加入したもののその後お金に困っていますという状態は避けなくてはなりません。
予定事業費は保険会社に支払う手数料のようなものですから、本当はしっかりその水準感に納得したうえでお支払いしたいです。
しかし残念ながらこの予定事業費はほとんどの会社は公表していません。
アクチュアリーであれば余程特殊な保険でなければ計算できますが、あなたが検討している複数の保険について、予定事業費を計算してくれるアクチュアリーはいないでしょう。
このため、高い保険に加入してしまいお金に困ってしまうような状況にならないようにするためには、保険に加入するときは似たような商品を探して保険料を比べることをお勧めします。
まったく同じ保障なのに保険料が違うのであれば差額が手数料の違いだと考えても差し支えないでしょう。
この差額が1年間で、または契約が終わるまでに合計でいくらになるのかを計算し、それがアフターサービスや募集人の方の質などと比べて納得できる水準なのかを入る前に検討しておくと、加入した後に後悔してしまうことを防ぐことができるかもしれません。
まとめ
今回は「なんで同じ保障なのに保険料が高いの?」と題して同じ保障にも関わらず保険料が変わる理由と、それに対する考え方を述べました。
同じ保障で保険料が異なる理由は基本的には手数料の違いです。手数料の実際の金額を知ることはとても難しいですが手数料の差は保険料の差額で一定程度把握することができます。
このため、後で後悔しないために、保険に加入するときは似たような保険を探して保険料を比較することを強くお勧めいたします。
そのうえで差額が納得できるかどうかの判断基準はアフターサービスが金額に見合っているか、また募集人の方がそのお金をお支払いをするに足る方かどうかということになるでしょう。
私はじぶんが詳しくないものについてはきちんとした方にご説明を頂き、納得して購入したいと考えますので、少し高くても気にしません。
ですので、いま現在保険に加入されている方は、きちんと保険料の調べたうえで納得して保険に加入され、現在お金に困っているわけでなければ必要以上に気にされることはないでしょう。
ただ今から保険に加入される方は、しっかりと本記事の内容をご理解されたうえで保険選びをされることをお勧めいたします。
それではまたお会いできることを楽しみにしています。
その他の保険に関する読み物として以下のような記事もありますので、もしお時間がありましたら読んでみて頂けると嬉しいです。
コメント